はじめに
「子どものために、いい学校を選んであげたい」
通信制高校・サポート校への進学を考えるとき、多くの保護者の方がそう思っています。学校説明会に足を運び、パンフレットを集め、インターネットで調べ——。それだけ真剣に向き合っているからこそ、ちょっとした「落とし穴」にはまってしまうことがあります。
この記事では、通信制高校・サポート校に長年勤務し、多くの生徒・保護者と面談を重ねてきた経験から、「保護者がやりがちなNG行動」を5つ紹介します。
「これ、やってたかも……」と感じることがあっても、責める必要はありません。知っているだけで、これからの関わり方が変わります。ぜひ、お子さんとの進路相談に活かしてみてください。
NG行動① 子どもの意志より、親の意志で学校を決める
「この学校が絶対いいと思う」「ここに決めなさい」——
保護者として学校を見比べ、「ここが一番合っている」と感じる気持ちはとてもよくわかります。でも、少し立ち止まって考えてほしいのです。通うのは、子ども自身です。
保護者が「良い」と思う学校と、子どもが「ここなら通えそう」と感じる学校は、必ずしも一致しません。校風・雰囲気・先生との相性・通学のしやすさ……こうした「感覚的なこと」が、実際に通い続けられるかどうかに大きく影響します。
現場で見てきた中で、「保護者が決めた学校に入学したものの、数ヶ月で通えなくなった」というケースは決して少なくありません。一方、「親はあまり乗り気じゃなかったけど、本人が強く希望した学校でいきいきと通えている」という生徒もたくさんいます。
最終的な判断は、もちろん保護者と本人が一緒に行うものです。でも、学校を選ぶプロセスに子ども自身の「ここに行きたい」という気持ちが入っているかどうかは、入学後の生活に大きく関わります。
説明会や見学には、できるだけお子さんと一緒に足を運んでみてください。
NG行動② 早く決めることにこだわりすぎる
「早く進路を決めてあげなきゃ」「周りはもう動いているのに……」——
保護者として焦る気持ちは、とても自然なことです。でも、本人の気持ちが固まる前に進路を決定してしまうことには、注意が必要です。
通信制高校・サポート校の出願は、全日制高校と比べて時期が柔軟なことが多く、年間を通じて入学できる学校もあります。「今すぐ決めなければ手遅れになる」という状況は、多くの場合そうではありません。
もちろん、「早く安心させてあげたい」という気持ちはよくわかります。でも、急いで決めた進路でも、入学後に「こんなはずじゃなかった」と感じてしまうことがあります。
どんなに良い学校でも、100%すべての希望を叶えることはできません。入学後に「思っていたのと違う」と感じる場面は必ず出てきます。そのとき、自分で選んだという実感が、困難を乗り越えるための力になるのです。
「早く決める」よりも、「納得して決める」ことの方が、長い目で見れば大切なことも多いです。お子さんが考えをまとめる時間を、大切にしてあげてください。
NG行動③ 通信制高校をネガティブな環境だと思いすぎる
「通信制に行ったら、就職や大学進学で不利になるんじゃないか」「通信制に通う子は、問題を抱えた子ばかりなんじゃないか」——
こうした不安を持つ保護者の方は、今もいらっしゃいます。かつてはそうしたイメージが強かった時代もありましたが、現在の通信制高校・サポート校は大きく変わっています。
卒業後の進路について言えば、大学・短大・専門学校への進学も、就職も、十分に可能です。2024年度には、通信制高校からの大学等進学率が28.6%と過去最高を記録しています。大学進学を目指す生徒向けのコースを設けている学校も増えており、予備校と連携したカリキュラムを持つ学校もあります。
在籍する生徒についても、「不登校だった子」「特性があって全日制に合わなかった子」だけではなく、「やりたいことに集中したくて選んだ子」「スポーツや芸能活動と両立している子」など、さまざまなバックグラウンドを持つ生徒が通っています。
通信制高校・サポート校は、学びの環境が多様化する中で生まれた「もう一つの選択肢」です。 「失敗した子が行く場所」ではなく、「自分に合った学び方ができる学校」として、前向きに捉えていただけたらと思います。
お子さんが「通信制高校に行きたい」と言ったとき、保護者の方の反応はお子さんの気持ちに大きく影響します。不安な気持ちはあっても、まずは一緒に考えてみてください。
NG行動④ なんでも学校がなんとかしてくれると思い込む
「学校に入れば、あとは先生がフォローしてくれるだろう」——
通信制高校・サポート校は、個別サポートが手厚い学校が多いのは確かです。でも、ひとつ大切なことをお伝えしたいと思います。通信制高校は、義務教育ではありません。
単位の修得は、授業への出席・レポートの提出・テストの受験など、一定の要件を満たす必要があります。サポート校のスタッフや担任が丁寧に関わってはくれますが、最終的に「学ぶ」という行動をするのは、本人です。
「全部お任せします」というスタンスでいると、生徒自身が「自分でやらなくていい」と感じてしまい、結果として単位が取れなかったり、卒業が遅れたりするケースもあります。
学校側がサポートできることと、本人や家庭が担う部分がある——この役割分担を、入学前から意識しておくことが大切です。
入学後も、学校からの連絡事項の確認・提出物の期限管理など、保護者が少し気にかけてあげることが、お子さんの安定した学校生活につながります。「先生を信頼する」ことと「丸投げする」ことは、似ているようで違います。ぜひ、学校と家庭で連携する意識を持っていただけると嬉しいです。
NG行動⑤ 子どもの「今の状態」だけで学校を選ぶ
「今は外に出るのもしんどそうだから、自宅学習中心の学校がいいかな」「まだ人と会うのが苦手みたいだから、登校日が少ない方がいいだろう」——
お子さんの状態を見て、「今の状態に合った環境」を選ぼうとする気持ちは、とても自然です。でも、一つ意識してほしいことがあります。中学3年生のときの状態と、1年後・2年後の状態は、必ずしも同じではないということです。
不登校の経験がある生徒でも、環境が変わることで、「意外と登校できた」「友達ができてどんどん前向きになった」というケースはたくさんあります。逆に、「もう少し関わりが欲しかったけど、選んだ学校はサポートが薄かった」という後悔もあります。
「今しんどいから、なるべく負担の少ない学校を」という判断は大切です。でも同時に、「これからどんな高校生活を送ってほしいか」「どんな力をつけてほしいか」という視点も加えて、学校を選んでみてください。
学校のスタッフや担任に「今の状態」と「将来の希望」の両方を伝えることで、より的確なアドバイスをもらえることも多いです。
おわりに
5つのNG行動を紹介してきましたが、いかがでしたか?
どれも「子どものためを思ってやっていること」ばかりです。それは本当に素晴らしいことです。でも、少し視点を変えるだけで、進路選びがよりうまくいくことがあります。
通信制高校・サポート校の進路相談では、学校のスタッフに「気になっていること」「不安なこと」を率直に話してみてください。現場のスタッフは、そうした相談に慣れています。「こんなこと聞いてもいいのかな」と思うことこそ、ぜひ聞いてみてください。
お子さんにとって「ここに来て良かった」と思える学校との出会いを、応援しています。
まとめ
- 子どもの意志より親の意志で学校を決める → 通うのは子ども自身。子どもの「ここに行きたい」という気持ちを大切に。
- 早く決めることにこだわりすぎる → 納得して決めることが、困難を乗り越える力になる。
- 通信制をネガティブな環境だと思いすぎる → 大学進学・就職ともに可能。学びの環境は多様化している。
- なんでも学校がなんとかしてくれると思い込む → 義務教育ではない。学校と家庭で連携する意識を。
- 子どもの「今の状態」だけで学校を選ぶ → 今と1〜2年後は違う。将来の希望も合わせて考えて。
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この記事は通信制高校・サポート校に長年勤務経験のある教員が、実際の担任・面談経験をもとに執筆しています。掲載情報は2026年9月時点のものです。