この記事でわかること


はじめに|「通信制高校だと大学に行けないの?」という不安を持つ方へ

「通信制高校からでも、大学って行けるの?」 「不登校だったうちの子が、大学進学なんてできるはずがない」 「通信制は就職するしかないと思っていた」

通信制高校・サポート校で長年担任として勤め、多くの生徒の進路をサポートしてきた経験があります。こうした言葉は、生徒本人からも保護者からも、何度も聞いてきました。

結論から言います。通信制高校からでも、大学進学はできます。

実際に私が担任した生徒の中には、中学3年間ほとんど勉強できなかったところから難関私立大学に合格した子も、不登校を経験しながら公立看護大学に進んだ子もいます。

ただし、どの入試方式を選ぶか・いつから・何を準備するかによって、結果は大きく変わります。この記事では、現場で見てきたリアルな実例と、準備のポイントをお伝えします。


通信制高校からの大学進学、実態はどうなっている?

まず、データで現状を確認しておきましょう。

文部科学省の学校基本調査(2024年度)によると、通信制高校卒業生の大学進学率は28.6%と過去最高を更新しています。10年前(2014年度)と比べると、大学進学者数は約2.6倍に増加しており、着実に上昇し続けています。

また、通信制高校の在籍者数も2025年度に30万人を突破(文部科学省「2025年度学校基本調査速報値」)。高校生全体の約10人に1人が通信制高校を選ぶ時代になっています。

「一部の生徒の例外的な選択肢」ではなく、通信制高校はすでに高校進学の主要な選択肢のひとつです。


通信制高校生が使える入試方式

通信制高校の生徒も、全日制高校の生徒と同じように以下の入試方式を利用できます。自分に合った方式を選ぶことが、大学進学への重要な第一歩です。

① 一般入試(一般選抜)

学力試験の結果で合否が決まる、最もスタンダードな入試方式です。

通信制高校は科目を絞った学習がしやすい環境であるため、志望校に必要な科目に集中して対策できるというメリットがあります。一方で、学力をしっかり積み上げる必要があるため、早めの学習習慣の確立が求められます。

② 総合型選抜(旧AO入試)

学力だけでなく、志望理由・活動実績・将来の目標などを総合的に評価する入試です。

通信制高校生は時間の自由度が高いため、ボランティア・課外活動・プロジェクト活動などに取り組みやすく、実績を積みやすい傾向があります。総合型選抜を実施する国公立大学は2024年度入試で105大学343学部と過去最高を更新しており、選択肢は広がっています。

出願時期が早い大学では夏休み明けに締め切りとなるケースも多く、早めの準備が必須です。

③ 学校推薦型選抜(指定校推薦・公募推薦)

高校からの推薦をもとに受験する入試です。特に指定校推薦は、校内セレクションを通過できれば合格率が非常に高いという特徴があります。

広域通信制の学校は全国の大学から指定校推薦枠を持っていることが多く、意外と多くの選択肢があります。ただし、評定(内申点)が出願基準として設けられていることがほとんどのため、日頃の授業への取り組みが重要です。


実例紹介|不登校経験ありでも大学に進学できた4人の生徒

ここからが、この記事の核心です。私が実際に担任として関わった生徒たちの事例を紹介します。

Aさん|中学3年間別室登校→難関私立大学(文系)に一般入試で合格

中学3年間、別室での登校が続き、ほとんど勉強できていない状態で通信制高校に入学したAさん。

Aさんが進学できた大きな理由のひとつは、学習環境の選び方でした。在籍した学校は授業選択の自由度が高く、私立文系に狙いを定めて、1年次は中学からの学び直しに集中。2年次以降は入試に必要な科目のみに絞って学習しました。また、ウェブ教材が学費に含まれていたため、学校と自宅の両方で効率よく勉強できる環境が整っていました。

合格のポイントは、目標に向かって効率よく努力できる環境を自分で選んだこと。

全日制高校だと、入試に関係のない科目も含めて全て学ぶ必要があります。通信制高校の柔軟なカリキュラムが、Aさんの合格を後押ししました。


Bさん|全日制から転入→公立看護大学に一般入試で合格

高校1年次に全日制高校から通信制高校へ転入したBさん。「看護師になりたい」という明確な夢と志望校がありました。

通信制高校の柔軟なカリキュラムを最大限に活かし、①学力向上(入試対策)②看護実習③ボランティア活動の3つに絞って高校生活を送りました。

看護系の大学・専門学校の入試では、面接で「本当に毎日通えるのか?」と聞かれることが少なくありません。Bさんはその対策として、日々の学校生活はもちろん、課外活動でも積極的に動き、「継続して活動できる人間であること」を証明できるよう準備していました。

合格のポイントは、やるべきことを絞ってコツコツ積み上げたこと。


Cさん|全日制から転入→総合型選抜で私立大学に合格

高校2年次に全日制から転入したCさん。「勉強はあまり好きじゃないけど、総合型選抜で絶対合格したい」という強い気持ちがありました。

観光や地域創生への興味から、地域課題を解決するプロジェクトを立ち上げ、地域企業や行政にも積極的にアプローチ。活動を継続的に広げながら、その実績を総合型選抜でアピールし、合格をつかみました。

合格のポイントは、「ネタ作りのための単発ボランティア」ではなく、継続した活動で実績の重みが違ったこと。

総合型選抜では、表面的な活動より「本気で向き合い続けた経験」が評価されます。


Dさん|中学時代に不登校→指定校推薦で私立大学に合格

中学時代に不登校を経験し、通信制高校に新入生として入学したDさん。メンタル面に不安があり、入試のプレッシャーをどう乗り越えるかが大きな課題でした。

ただ、日頃の授業や課題提出にとても真面目に取り組んでおり、成績は良好でした。本人の状況と成績を総合的に判断し、指定校推薦という方式を選択。学習面だけでなく、校内外の活動にも積極的に参加し、評価をより高めた結果、指定校推薦で合格を果たしました。

合格のポイントは、自分の状況を正確に分析し、強みを活かせる入試方式を選んだこと。

「どの入試方式が自分に合っているか」を考えることは、大学進学において非常に重要な視点です。


通信制高校ならではの「大学進学に有利な点」

現場で感じてきた、通信制高校だからこそ活きる強みをまとめます。


大学側が持つ懸念と、その対策

通信制高校生が大学進学を目指す際、知っておきたい注意点があります。

「毎日通学できるのか?」という懸念

特に医療系・看護系の大学では実習が多く、「本当に毎日通えるのか」という点を重視されます。学力は入試で測れますが、継続して通学できるかどうかは証明しにくい部分です。

対策として有効なのは、面接で日々の生活実績を具体的に伝えること。学校生活・習い事・アルバイトなど、継続して取り組んできた事実を具体的に語ることで、「通学できる人間である」ことを示していきましょう。

調査書の出席日数に要注意

通信制高校の中には、調査書の出席日数欄に「単位修得のための最低限のスクーリング日数(年間10日程度)」しか記載しない学校があります。実際にはほぼ毎日登校していても、調査書だけではそれが伝わらないケースがあります。

この場合、面接の場でしっかりと実際の登校状況をアピールすることが必要です。通っている学校の記載方針を事前に確認しておきましょう。

保護者世代の思い込みにご注意を

「通信制高校から大学進学はできない」と最初から諦めてしまう保護者の方も少なくありません。保護者世代の学生時代は、今ほど総合型選抜や推薦入試がメジャーではありませんでした。入試の多様化が進んだ今は、状況がまったく異なります。


在学中からやっておくべき準備

4人の実例を通じて共通して言えることがあります。それは、早めに動くことの大切さです。

高校生活はあっという間に過ぎます。「3年生になってから考えよう」と思っていると、取り返しのつかない場面が出てきます。

特に注意したいのが入試スケジュールの把握。総合型選抜は夏休み明けに出願締め切りとなる大学も多く、3年生になってから動き始めると間に合わないケースがあります。

また、活動実績は「1年かけて積み上げたもの」と「数日で準備したもの」では、重みがまったく違います。早めに動き出した生徒ほど、就職活動と同様に大学進学もうまくいく傾向があります。

入試方式別の準備ポイント

入試方式特に意識すること
一般入試早めの学習習慣の確立・科目の絞り込み
総合型選抜継続した課外活動・志望理由の深掘り
指定校推薦評定(内申点)の維持・校内外の活動参加

推薦系の入試を狙うなら、評定(内申点)の意識は1年生のうちから持っておきましょう。推薦には評定基準が設けられていることがほとんどです。


大学進学を目指すなら「高校選び」が重要

通信制高校の中でも、「学力向上に強い学校」「総合型選抜対策・活動実績に強い学校」など、強みはさまざまです。

大学進学を明確に目指しているなら、自分に必要な力を養える環境かどうかを意識して高校選びをすることが大切です。

また、学校のパンフレットやホームページで「進路実績」を確認する際は注意が必要です。「進学実績」と「合格実績」は別物です。

合格実績だけを見て「難関大学にたくさん合格している」と判断するのは早計です。実際の進学先を確認する視点を持ちましょう。

ただし、どれほど環境が整っていても、それを活かすのは自分次第です。「この高校を選んだから大学に合格できる」わけではありません。自分で考え、自分で動く姿勢を忘れずに。


まとめ

通信制高校からの大学進学について、大切なポイントをまとめます。


生徒本人へ

通信制高校からでも大学進学は目指せます。私が担任した生徒の中には、中学時代にほとんど勉強できなかったところから難関私立大学に合格した子も、不登校を経験しながら国公立大学に進んだ子もいます。最初から「どうせ無理」と諦めるのは、本当にもったいないと思います。

保護者の方へ

保護者の方の中には、ご自身の時代のイメージで「通信制高校からは大学に行けない」と思い込んでいる方も少なくありません。でも今は、推薦入試・総合型選抜など入試の選択肢も多様です。お子さんの可能性を、親御さんが先に閉じてしまわないでほしいと思っています。

共通して伝えたいこと

大切なのは、早めに動くこと。そして、自分に合った環境を選ぶこと。不安があるなら、ぜひ学校見学の場で遠慮なく聞いてみてください。


関連記事


この記事は通信制高校・サポート校に長年勤務経験のある教員が、実際の担任・進路支援の経験をもとに執筆しています。